正体不明の「国境税」主張 国内生産促進狙い、共和党との食い違いも
トランプ大統領始動【ワシントン=小雲規生】トランプ米大統領が米国の製造業復活の“切り札”として口にしている「国境税」が米国の産業界を困惑させている。保護主義的姿勢を鮮明にするトランプ氏は23日の企業トップらとの会談でも、生産拠点を米国外に移すなどした企業には国境税を課すと表明。しかし国境税の詳細は明らかにされておらず、企業側は頭を悩ませるしかない状況だ。一方、共和党は「国境調整」という別の仕組みを導入しようとしているが、トランプ氏との思惑の違いも明らかになっている。
トランプ氏は選挙戦中、生産拠点を移した企業が米国に輸出する際には高い「関税」をかけるとしてきた。しかし大統領選後は「国境税」という言葉を使うようになっている。
トランプ氏は23日の企業トップらとの会合でも、米国で労働者を解雇して米国外に工場を建設し、その工場で作られた製品を米国に輸出する企業は「かなりの国境税を払わねばならないだろう」と強調した。これまでの公約は、大統領就任後も変わらないことを示したかたちだ。
しかしダンピング(不当廉売)などの理由がないまま、特定企業の米国向け輸出にだけ課税することは世界貿易機関(WTO)のルールに違反する恐れがある。トランプ氏は選挙戦中、中国からの輸入にも45%の税金をかけるとしてきたが、こちらも詳細は不明だ。
一方、共和党は税制改革案のなかで「国境調整」と呼ばれる仕組みを盛り込んでいる。企業が海外輸出で得た収入を課税対象から外すことで米国内での生産や輸出を促すとともに、企業が海外から輸入した部品から製品を作って収入を得るなどした場合は、輸入の際に支払った代金をコストとして利益から差し引くことを認めないとする内容だ。
WTOのルールでは、国境調整は法人税のような直接税では原則として禁じられている一方、付加価値税(VAT)のような間接税では認められている。共和党の改革案は法人への課税を対象としているために問題になる可能性があるが、共和党は昨年6月の報告書で「米国の税体系を間接税主体の内容に改革することで、国境調整の導入が可能になる」としている。
ただしトランプ氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで、国境調整について「複雑すぎる」と否定的な見方を示した。一方、ロイター通信によると、ブレイディ下院歳入委員長(共和党)は24日、国境調整が認められなければトランプ氏が主張する法人税減税もできないとの見方を示しており、トランプ氏と共和党の間の調整が難航する可能性も出てきている。
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