「政府系」の東芝支援に高いハードル 革新機構は出資スキーム構築できず

 
東芝本社=東京都港区

 東芝が経営再建策として分社、売却する半導体事業の「東芝メモリ」に、政府が産業革新機構や日本政策投資銀行などを活用して、出資する案が浮上しているが、実現には高いハードルがある。海外への技術流出を防ぎたい政府の意図には産業界も支持する。ただ、革新機構は経営再建を目的とした官民ファンドではないため、出資のスキームが構築できないというのだ。

 革新機構で支援や出資の対象や内容を決定する産業革新委員会では、東芝や東芝メモリに対する支援についてはまだ協議に入っていないという。

 機構関係者によると、同機構はオープンイノベーションを推進させるためのファンドであるため、出資するには何らかの事業シナジーを発揮できる日本企業が支援を打ち出し、そこに機構が出資する形態しか考えられない状況だ。

 だが、支援に名乗りを上げる日本のメーカーは今のところない。東芝メモリは独自の技術的な進展をとげてきたことから、他のメーカーは統合しても相乗効果が乏しいとされている。

 革新機構と政投銀がともに東芝メモリへの出資が可能となったとしても、結果的には東芝に資金が渡ることから、「税金を使った大企業の救済、支援の側面も残り、国民の理解が得られるか不安がある」(革新機構関係者)。

 想定される出資額は2社で最大6千億円という前例のない大規模になる可能性があり、いずれにしてもハードルは高い。

 また、債務超過に陥っている東芝としては、東芝メモリ株式を売却することで再建のための資金を確保したい意向だ。ただ、複数社が共同買収する案は1社あたりの出資が小さく、支配権が弱まる。このため、単独買収より価格は低下するとの指摘もある。