「一帯一路」の拠点に ミャンマーに強まる中国圧力、「内政干渉」警戒感

アセアニア経済
握手を交わすミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相(左)と中国の習近平国家主席=16日、北京市(AP)

 「内政干渉」警戒感

 ミャンマーを実質的に率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が、中国との関係を深めている。中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議に出席するため訪れた北京では、習近平国家主席と16日に会談し、インフラ建設や貿易などの分野で協力を強化する方針で一致した。また習氏は、ミャンマー政府と少数民族武装勢力との和平プロセスへの援助も表明し、スー・チー氏は紛争が続く国境地帯の安定に期待を示した。経済ばかりか内政問題でも中国に依存する傾向に、ミャンマー国内では警戒感も広がっている。

 「一帯一路」の拠点に

 スー・チー氏は、李克強首相とも会談。中国外務省によると、李氏は、ミャンマー北部カチン州ミッソンで中国が主導する巨大ダム建設再開による「信頼の構築」を求めた。

 建設計画は、ミャンマーの旧軍事政権が中国と合意。総事業費は36億ドルで、発電量の9割を中国に輸出する。だが、民政移管完了から半年後の2011年9月、テイン・セイン前大統領が国民の批判を受け中断した。

 ただ、スー・チー氏は、ダム建設再開について、調査委員会による環境影響などの「報告を待って判断する」と、即答を避け続けている。かつての建設反対姿勢を翻して再開を容認すれば、国内世論の反発は必至だからだ。

 ロイター通信は、中国が交渉の行き詰まりの打破へ、代替案を提示していると報じた。国内の電力余剰も背景にダムを断念する一方、契約破棄に関わる賠償金8億ドル(約889億6000万円)を突きつけて新規の経済開発案件をミャンマー側に認めさせ、「メンツを保つ」方針に転換したという。

 新規案件の目玉は、ミャンマー西部ラカイン州チャウピューの港湾開発だ。中国の複合国営企業、中国中信集団(CITIC)が率いる企業連合が資本出資し港湾権利の70~85%を保有する方向で、ミャンマー側と今月から交渉に入るという。ミャンマー側は昨年、両国の対等出資を打診したが、CITIC側が拒否したとされる。

 中国は、「一帯一路」構想の中で、同港を拠点の一つと見なしている。すでに中国南部の雲南省と同港を結ぶパイプラインを敷設し、天然ガスを輸送。今月からは、条件交渉で2年ほど遅れていた原油の輸送も始まった。中国は、輸入量の5%に相当する原油について、米国の影響力が強いマラッカ海峡を経ずに、中東などからタンカーで同港に陸揚げしパイプラインで調達できるようになった。

 同港は水深が深い、自然の良港として知られる。中国が約8割を出資して支配すれば、潜水艦の寄港など、事実上の中国軍港化も視野に入る。海洋進出を強める中国には、南シナ海に造成した人工島の軍事拠点化に加え、南シナ海を経ずにインド洋に艦船を展開する拠点の構築につながる。

 武装勢力に影響力

 李氏は会談で、スー・チー氏が24日からミャンマーの首都ネピドーで開催する、少数民族武装勢力との和平会議への協力も表明した。スー・チー氏は、60年以上にわたって国軍と武装勢力との間で続く内戦の終結を最重要課題に掲げ、各武装勢力に「全国停戦協定」への署名を呼び掛けているが、中国との国境付近などでは今も散発的な衝突が続く。中国はこれら武装勢力に影響力を持っているとされており、会議の成功には中国の支援が不可欠だ。

 だが、中国の軍事的な影響力拡大に警戒を強めるミャンマー国軍は、中国の関与を「内政干渉」ととらえ、不快感を隠さない。中国による港湾開発にも、反対を示す可能性がある。

 中国は、スー・チー氏が欧米から人権問題で批判をあびる西部ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャ問題でも、隣国のバングラデシュとの仲介など、支援姿勢を示している。スー・チー氏は、硬軟織り交ぜた中国からの“協力強化”の圧力と、それに比例して高まる国内の対中警戒論の板挟みを余儀なくされそうだ。(シンガポール 吉村英輝)