“世界のリーダー”誇示の好機と中国 大国ぶりを強調へ
欧州連合(EU)と中国との首脳会談での調印式の前に会話を交わすドナルド・トゥスクEU議長(左)と李克強・中国首相。右はジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長=2日、ブリュッセル(AP)
【北京=藤本欣也】米国が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を発表したことについて、中国の習近平政権は“世界のリーダー”をアピールする好機と捉えている。「経済のグローバル化」同様、米国に代わり世界を牽引(けんいん)する中国の大国ぶりを強調。米国抜きの枠組みで中国の存在を誇示し、影響力を拡大していく構えだ。
中国国営の新華社通信は2日未明、「米、パリ協定離脱発表」を速報。解説記事では「今後、内外の広範な批判に直面するだろう」と指摘し、米国の孤立化が進むとの見方を示した。
中国外務省の華春瑩報道官は同日の記者会見で「ようやく得られた(パリ協定の)成果を各国は守るべきだ」と米国の離脱を批判。「中国は引き続き気候変動に積極的に対応する。これは、発展途上の大国として中国が担っている国際的責任だ」と主張し“リーダー”ぶりを際立たせている。
ちょうど今年1月、習国家主席がスイス・ダボスで演説し、保護主義的なトランプ米政権を念頭に、自由競争を阻む保護主義への反対を表明、国際社会から歓迎されたときと似ている。
中国にとっては、米国の離脱発表が李克強首相の訪欧と時期が重なり、米国とは対照的に、欧州との関係緊密化を内外に印象づける絶好の機会になった。
中国人民大学・欧州連合(EU)研究センター主任の王義●(=木へんに危)(ぎき)教授は「中国と欧州にはグローバル化や多国間主義など共通の価値観が増えている。気候変動での協力は中欧関係の新たな原動力になる」と指摘する。
習政権が掲げる国家プロジェクト「一帯一路」も、中国と欧州を結ぶ広域経済圏構想だ。米欧関係がぎくしゃくしている間に、英仏独との政治・経済的関係を強化し、一帯一路への欧州主要国の取り込みも狙う。
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