中国一流企業の世界的価値は? アップル、トヨタより知名度は低いが…

専欄

 「華為(ファーウェイ)」「ハイアール」「テンセント」「聯想(レノボ)」「中国工商銀行」「中国中央テレビ」…。中国一般庶民がイメージする代表的な中国ブランドである。間違いなく、これらはすべて一流企業だ。しかし世界的知名度という点ではどうなのだろうか。

 2017年5月10日、中国に新しい記念日が設立された。「中国ブランドデー」である。目的は中国ブランドの価値を再認識させることにあるようだ。

 この日中国中央テレビニュース番組「新聞1+1」は、「世界的に有名な中国ブランドは何故(なぜ)少ないのか」という内容で番組を放送した。

 この日はまず、他国の世界的ブランドに注目する。米国には「アップル」「グーグル」「コカ・コーラ」「アマゾン」があり、フランスは「シャネル」「ルイ・ヴィトン」等、日本には「トヨタ」「パナソニック」「ホンダ」等々がある。これらの海外ブランドに比べると中国一流企業の知名度はまだ低い。

 それを端的に表しているのが中国人の消費行動である。世界で最も購買意欲の旺盛な中国人消費者が、自国ブランドよりも海外ブランドに魅力を感じている。国家はこれを「中国ブランドの危機」とみているようだ。

 中国ブランドは本当に実力がないのだろうか。そうともいえない。米国で発表された16年度「世界のブランド上位500」によると、国別ランキング1位は米国(227)で、2位は英国とフランス(41)、3位が日本(37)と続く。中国(36)は4位で、決して少なくない。

 上位500の創業年数を見ても、平均が約94年で、中国ブランドは、貴州茅台が417年、青島ビールは113年、中国銀行が104年である。歴史と伝統という角度から見ても、中国ブランドは遜色ないといえる。

 しかし中国人消費者は、やはり海外ブランドを選択する。

 「日本で買う漢方薬は、混ざり物が少なくて、副作用もないと聞いている」「米国のビタミン剤やコラーゲンは質がいい」(「新聞1+1」)

 中国人訪日旅行客がこぞって温水便座、炊飯器を購入する爆買い現象は、中国でも有名だ。中国にとっては資金流出でもある。「中国・杭州で製造している商品を何故わざわざ日本まで行って買うのか」と嘆く。

 我々日本人も、中国ブランドは質・信用度などの点で、まだまだ日本製品に及ばないと考えている。しかし今後、イメージと実体が合致するようになれば、世界市場でとてつもない巨大ブランドとなることを、知っておく必要がある。(ノンフィクション作家・青樹明子)