その一方、今年から実施されている一連の金融引き締め策は深刻な副作用を引き起こしている。金融引き締めの中で各金融機関の融資枠が大幅に縮小された結果、多くの中小企業は銀行から融資をもらえず大変な経営難に陥っているのである。6月の中国経済関係各紙を開くと、「資金難、中小企業倒産ラッシュが始まる」「長江デルタ、中小企業生存の危機」「温州地域、中小が二割生産停止」などのタイトルが躍っているのが目につく。金融引き締め策実施の結果、国内総生産の6割を支える中小企業が苦境に立たされていることがよく分かる。
中国経済の減速はもはや避けられないであろうが、実際、減速に対する懸念が中国国内でも広がっている。6月27日、前出の李稲葵氏も外国メディアからの取材の中で「減速の懸念」を表明しているし、経済学界の大御所で北京大教授の励以寧氏は同じ27日、金融引き締め策がそのまま継続していけば、中国経済は「インフレ率が上昇しながらの成長率の減速」に直面することになるだろうとの警告を発している。
それらの懸念や警告はまったく正しい。このままいけば中国経済は確実に落ちていくのであろう。しかしだからといって、政府は現在の金融引き締め策を打ち切ることもできない。引き締めの手綱を緩めれば、インフレがよりいっそうの猛威を振るってくるに違いない。政府の抱えるジレンマは深まるばかりである。