こうした中で、6月の北京市内の不動産物件の成約件数が29カ月ぶりの最低水準に落ちたなど、今年の春から始まった不動産市場の冷え込みが進んでいる。それもまた、政府による金融引き締めの結果の一つであるが、不動産市場の停滞がさらに続くと、大幅な価格の下落がいずれやってこよう。最近、社会科学院工業経済研究所の曹建海研究員という人物の口から、「2012年に北京の不動産価格が5割も暴落するだろう」との不気味な予言まで出されている。
経済の減速と不動産バブルの崩壊が徐々に目の前の現実となりつつある中、国際社会でささやかれ始めている中国経済のハードランディング(中国語では「硬着陸」)は、いよいよその足音が聞こえてくる。
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【プロフィル】石平 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。