バールのたまり場としての役割が小さくなった。その原因にフェイスブックなどのSNSが影響しているのではないか、とチマトリブス氏に聞いてみた。
「手持ち無沙汰の時間をバールの雑談で過ごすのではなく、スマホで仲間とチャットするに費やしているのは確か。そのかわりヴァーチャルで知り合った友人とリアルで会うためにバールを使う、というわけ」
人口密度の高い都市で目立つ「目的がはっきりした利用」だ。
ネットの普及とグローバル経済の拡大によって地球上のあらゆるところが繋がり、地域差がなくなってきたとよく言われるが、これは大都市間に地域差がなくなってきているとの現象を指している。
バールの変貌を見ても分かるように、ミラノにインターナショナルなスタイルが定着したことによって「イタリアらしさ」が減り、地方には昔ながらのコミュニティとしての「イタリアらしい」バールが根強く残る。そこで結果的に大都市と地方の違いが浮き彫りになる。もちろん以前もあった違いだが、その差が拡大している。
このギャップに対して3つのアプローチがある。ギャップを減らすのか、ギャップを都会がどう生かすのか、ギャップを地方が逆にどう生かすのか。いずれの場所でも強く問われている課題だ。
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ローカリゼーションマップとは? 異文化市場をモノのローカリゼーションレベルから理解するアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だ。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。今年は素材ビジネスやローカリゼーションマップのワークショップに注力。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih