08年9月のリーマン・ショック後の金融危機で、欧米など主要国の中央銀行は一斉に利下げに踏み切った。その後、日銀を追い越す緩和スピードで、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が資産買い入れを拡大する「金融緩和競争」の中、外国為替市場では歴史的な円高が進行した。
日本の緩和策は、絶対金額は空前の規模だったが、「(実行ペースは)徐々にとか、だんだんというもの。これではインパクトがほとんどない」(斉藤CEO)。金融バブルなどの副作用を恐れて、緩和を渋り、競争で後れをとった白川氏は市場を味方にできず、資産買い取りの効果を減殺してしまった。
実は、FRBやECBが迅速な金融緩和に舵を切れた一因には、白川氏の“助言”がある。
白川氏は、日本のバブル崩壊の経験や、デフレ克服に向けて社債などのリスク資産も買い入れるなど非伝統的な緩和策に先鞭(せんべん)を付けた知見を、各国の金融政策の専門家が集まる国際舞台で積極的に披露してきた。