さらに、中央軍事委主席に就任したばかりの習総書記による「広州軍区」視察(12年12月)にあたり、中国メディアは実戦時や実戦想定時の呼称「広州戦区」を用いた。「戦区」なる呼称は、民主的総統選挙を恫喝(どうかつ)すべく台湾近海にミサイルを撃ち込んだ1996年の台湾危機で、中国メディアが使って以来の登場。
しかも視察の際、全軍に「三つの銘記」を号令した。内容は(1)共産党による指揮厳守が強軍の魂(2)戦争遂行と、その勝利が強軍の要-と勇ましい。
ただ、小欄は「軍法に従った厳正監理が軍の基(もとい)」と謳(うた)う(3)に注目する。習総書記は同じ時期「軍内部での職権売買や汚職・腐敗」を批判し「このままで本当に戦争ができるのか」と糾弾。軍紀・軍法に責任を持ち、軍内検察機関を管轄する総政治部と中央軍事委も軍紀引き締めの教育活動を指示した。
尖閣諸島奪取に向け、戦力投入を厭わぬ中国が、環境創りを始めた可能性は濃厚だ。同時に、日本との緊張状態を演出して、軍内基盤が脆弱(ぜいじゃく)な習総書記がタカ派の軍高官を優遇し、軍内での権威を確立せんとする狙い。また、緊張状態による軍紀立て直しを図る、複数の側面を併せ持つ。