同幹部によると、移転を検討しているのは従業員数が1000~2000人規模の中小企業が多い。こうした規模の企業であれば、100億ルピア程度とみられる費用をかけても移転を実行した方が、ジャカルタにとどまるよりも中長期的には利益になるという。APIはジャカルタ以外でも生産性に変わりはないとし、移転で地方への投資も進むと利点を強調する。
これに対し、労働組合側は反発をあらわにしている。繊維業の労組幹部は「賃上げを要求するたびに生産性が上がらないのを労働者だけの責任にし、移転をちらつかせる」と業界側の姿勢を批判し、移転は「論外」だと訴えた。
労使の間に立つ政府は8月末、「最低賃金の上昇率はインフレ率と同等であるべきだ」との勧告を出して投資家を安心させようとしたものの、労働組合の抗議活動が活発化しつつあり、12月末の賃金交渉の期限へ向けて首都ジャカルタの緊張は高まっている。
インドネシアは世界12位の繊維・衣料製品輸出国。2012年の輸出額は、外需の低迷から125億ドル(約1兆2220億円)と11年比で10億ドル減少したが、今年は11年の水準まで回復するとみられている。(シンガポール支局)