安倍晋三首相は、衆参ねじれ解消後初の本格的な論戦の場となる臨時国会の所信表明演説でも、7月の参院選前と同様「経済再生」に一番の力点を置いた。消費税率の8%引き上げを決断し、増税後の景気腰折れを防ぐため、これまで以上に成長戦略の実行が重要になったからだ。憲法改正など「安倍カラー」は前面には出さないが、国家安全保障会議(日本版NSC)設置といった政府・与党内で合意が得られたものから着実に結果を出す方針だ。
首相は「この国会は成長戦略の実行が問われる国会だ」と強調するなど、演説の約半分を「経済再生」に割いた。特に、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の年内妥結に向け、農地の大規模集約化を進めるための「農地集積バンク」創設といった農業分野の改革に強い意気込みを示している。
その一方で、首相の思い入れが強い外交・安全保障政策に関しては、具体策としては日本版NSC設置、国家安全保障戦略策定ぐらいしか触れられず、やや物足りなさも残った。中国、韓国との関係についての直接的な言及はなかった。
首相周辺は「強い経済がなければ『安倍カラー』も打ち出せない。臨時国会を安保一色にしたくなかった」と説明しており、集団的自衛権の行使容認などに慎重姿勢の公明党にも配慮した格好だ。
「今の日本が直面している数々の課題は『意志の力』さえあれば、必ず乗り越えることができる」。首相は演説の終盤でこう強調し、「日本の復活」に向け並々ならぬ意欲を示したが、どの課題も一朝一夕には解決できない難問ばかりだ。
これらの課題を乗り越えて「安倍カラー」を前面に打ち出すことができるのか、この臨時国会が試金石となりそうだ。(桑原雄尚)