【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(7) (2/3ページ)

2013.10.25 05:00

 農地耕作権を保有して農業経営を行う世帯、日本でいえば農家にあたる世帯は、87年で68世帯。平等を旨とする社会主義時代においても、農地を持てる世帯は村の総世帯数の半分強に過ぎなかった。それでもこうした農家に雇われて農作業をする農業労働者世帯、25世帯を加えると、村の世帯の74%は農業に従事していた。軍政期の94年には農地保有世帯は半分以下になり、農業労働者世帯も増加したが、農業に従事する世帯は156世帯中106世帯と68%に減少した。そして現在、農地保有世帯は村の総世帯数236の3分の1以下の76となり、農業労働者世帯41と合わせても、総世帯数の半分に満たない。

 ◆商業への流入

 これに反比例して増加しているのが、左官と商店である。左官はもともと、この村の「村の職業」と言われるほど集中してはいたが、21世紀に入ると急増し、農業労働者の数を追い越して、農地耕作権を持たない者にとって最大の就業先となっている。もちろん村の中にこれだけ多数の左官の需要があるわけもなく、彼らは毎日弁当を持って朝早く村を出てゆく。中には遠くヤンゴンや中国国境の町ムセーまで、家族を伴って仕事に行く者もいる。

 商店主、飲食店主といっても大きな店を構えて売るものから家の前に小屋を建てて雑貨を売る店、道端に屋台やそれもない場合はテーブル一つで、キンマ(かむ嗜好(しこう)品)やモヒンガー(麺料理)などを売る店まで色々な形態がある。

 最近増加しているのが、パゴダ(仏塔)の周辺でガドーブェと呼ばれる供物を売ったり、茶菓や食事を提供したりする、これまで村にはなかったような比較的大きな店である。いずれにしても、いろいろな商品や外食への需要が村内あるいは村周辺で増加しているからこそ、こうした商売が急増しているのであろう。

 われわれも、そして都市に住むミャンマー人も、農村には農業をする人が住んでいると思い込みがちであるが、現状はそうした先入観を否定する方向に動いている。

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