2008年9月の「リーマン・ショック」を受け、輸出が打撃を受けると、当時の胡錦濤政権は国有商業銀行が融資を一挙に3倍に増やした。地方の党幹部は不動産開発の受け皿会社を相次いでつくり、農地を潰して高層ビル群を建設する。上海など大都市郊外はもちろん、住宅需要の少ない内陸部でも高層住宅建設ラッシュが起きた。中国は固定資産投資主導で、世界で最も早く、リーマン不況を乗り切ったが、その成功プロセスはがん細胞を増殖させた。汚職腐敗の横行である。
党の利権官僚によって不正蓄財される資金は、香港経由などで海外にいったん移されたあと中国本土に還流して投資される。その売買益は再び海外に流されたあと、今度は「外資」を装い、還流するというふうに循環する。その多くは不動産や高利回りの「理財商品」に投資され、バブルを膨らませる。それが外に逃避すると、不動産や金融商品バブルが崩壊する。現在の中国経済が抱えている不安の多くは、党幹部の利権にまみれた汚いカネによって引き起こされているのだ。
実際、中国経済の動向は、非合法の投機資金(「熱銭」)を追えばかなりわかる。
不正資金総額を粗っぽい中国統計から正確に算出することは不可能だが、およその見当は付けられる。厳しい外国為替管理体制を敷く中国で、海外との間で合法的に出入りできる資金は(1)貿易収支の黒字または赤字分(2)中国からの対外投資に伴う利子・配当収入から外国企業の対中投資の利子・配当収入を差し引いた所得収支(3)外国からの対中直接投資-である。これら合法資金の純増加額合計から外貨準備増加額を差し引いた額を非合法な資本収支としてみなしたのが本グラフである。
非合法資金はリーマン直後に年間2千億ドル規模で逃避したが、党指令による融資増で値上がりし始めた不動産に熱銭が還流し、不動産や金融のバブルを引き起こした。バブル崩壊不安が生じた11年後半から熱銭は引き上げ始め、資本逃避が続いたが、ことし4~6月期には再び流入に転じた。それを裏付けるように、中国不動産市況は最近、値上がりしている。差し当たり、中国はバブル崩壊危機をしのいだように見える。