財政審は29日にまとめた建議で、強い表現を用いて「歳出抑制」を求めた。財政再建に正面から取り組まなければ、近い将来、国民生活に深刻な影響を及ぼしかねない事態まで財政が悪化していることを国民に広く知らしめるためだ。
今年度の一般会計予算は、92.6兆円の歳出総額に対し税収は43.1兆円。歳出と税収のギャップは長期間の景気低迷で拡大し、国は毎年、多額の赤字国債を発行して不足を補ってきた。この結果、日本の政府債務残高は世界最悪の水準に膨らんでいる。
現在は、日銀が4月に導入した異次元緩和で、大量の国債を買い入れているため、長期金利は低く抑えられている。だが、今後2年程度で2%の物価目標の達成が見通せるようになれば、物価上昇とともに金利も上昇する。これは、国の債務残高に伴う利払い費が増えることを意味する。
建議は、世界3位の経済大国である日本が、金利が低い今のうちに財政再建を前進させなければ、「内外の投資家からの信認が維持できなくなり、金利や物価の急上昇を通じて、国民生活が危機的な状況に陥ることを決して忘れてはならない」と警告する。実際、欧州債務危機の震源地となったギリシャは、財政の悪化で市場の信認を失ったのを機に、国債発行が困難になり、社会の混乱を招いた。
消費税増税に備えた経済対策について「財源は本来、国債の償還に充てられるべきだ」としたのも、税収増をあてにした歳出圧力に警鐘を鳴らす意味がある。
経済は国家百年の計だ。景気に配慮するあまり、財政再建がおろそかになれば、財政悪化による混乱が現実となりかねない。将来世代に過大な負担をかけないために、財政再建に真剣に取り組むことが求められる。(小川真由美)