東日本大震災の被災地復興のため法人税に上乗せ課税されている復興特別法人税は、1年前倒しして今年度末で廃止されることが盛り込まれた。企業の税負担を軽くし賃上げにつなげ、来年4月の消費税増税後の景気の腰折れを防ぐのが狙い。賃上げには、経団連や大手製造業などは前向きな姿勢だが、中小企業などは慎重なまま。復興特別法人税の前倒し廃止の恩恵が、どこまで波及するかが焦点だ。
安倍晋三政権は消費増税後の景気腰折れを防ぎながら、デフレから脱却するには個人消費の回復につながる賃金上昇が欠かせないとして経済界に賃上げを繰り返し求めてきた。ただ要請に強制力はなく、賃上げは各企業の判断次第。このため政権は復興特別法人税を今年度末で廃止し、企業全体の負担を8000億円程度軽減。賃上げ原資を生み出すという秘策に打って出た。
復興に関する増税は法人税以外に、所得税にも1月から25年間かかっている。個人に先駆け負担が軽くなる企業は復興特別法人税廃止により賃上げを実施する責務を負った格好だ。経団連は先月22日の政労使会議で協力姿勢を表明、連合も2014年春闘方針でベースアップ(ベア)を5年ぶりに求めるなど賃上げの土壌は醸成されつつある。
ただ多くの企業は固定費の増加につながるベアには依然として慎重で、賃上げの道筋が確約されたわけではない。政権は復興特別法人税の前倒し廃止で、賃上げに対してより大きな責任を負ったことになり、成果が問われることになる。