現在は通信販売などで販売を続けているというが、目の前の日本の市場は少子高齢化が進み、縮小が続く。事業を継続していくためにも、これから先の供給市場のことも考えなければならない。「ならば、海外に進出してみてはどうか」とアドバイスを受け、経済が絶好調のタイに渡る決心をした。
11月24日の昼下がり。バンコク・トンロー地区にあるレストラン「ケンジズ・ラボ」のカウンターの中に稲田さんの姿があった。東京を中心に日本とタイの食の交流活動を続けているNPO法人(特定非営利活動法人)「Yum! Yam! SOUL SOUP KITCHEN」の代表理事、西田誠治さんらのメンバーが株式会社を立ち上げ、中小企業庁の助成を得て始めたイベント「めぐるKITCHEN」。日本各地の伝統食材や稀少食材をタイの市場に紹介していこうという試みの第1回の食材に、稲田さんの「いぐさ野菜の粉」が選ばれた。
◆そうめんなどに舌鼓
やや紅潮しながら挨拶に立った稲田さん。ゆっくりかみ締めながら次のように話し始めた。
「八代のイグサ栽培は500年以上も続いた貴重な日本の資源。ところが近年は、安い中国産が輸入されたり、多量の農薬が使われたりしたものが出回るようになってしまった。浄化作用があるイグサに農薬なんて本末転倒。イグサは神様からの贈り物。必要があって食用にも転じた。いぐさ野菜と命名したのは、そういった思いからです」
イベントには、飲食店関係者やバイヤー、食の愛好家ら延べ約100人が参加。イグサ粉末を練りこんだ「いぐさそうめん冷製パスタ」や「いぐさ粉入りニョッキ」「いぐさ粉入りたこ焼き」などが振舞われ、参加者が舌鼓を打っていた。西田さんらは「めぐるKITCHEN」を通じて今後も同様に稀少性の高い日本食材をタイ市場に広めていきたいとしている。