■低成長脱出へ国政選挙試金石に
2013年12月5日に南アフリカ共和国(南ア)のネルソン・マンデラ元大統領が逝去した。ズマ大統領は逝去の発表の中で「国家はその偉大な息子を、国民はその父を失った」と語った。アパルトヘイト政権打倒、民主政権確立のアイコンを失った南アが迎える14年は、民主化20周年にあたる。
14年4月前後に実施予定の国政選挙は、その後の南ア経済の鍵を握る。メリルリンチは選挙において与党アフリカ民族会議(ANC)への支持率が60%を下回る場合、ANC政権のポピュリズム(大衆迎合主義)的性格が強まり、財政収支の悪化に拍車がかかると予想する。ANCが過半数の支持を集め、第2期ズマ政権が発足することを疑う人はいないが、支持率によって政策の選択幅が狭まることは間違いない。
13年の経済成長率は2.1%と予想されているが、これは前年実績を0.4ポイント下回る。ストライキの頻発や欧州経済不調の継続、新興国経済の減速が影響している。南ア財務省の14年の成長率見通しは3.0%だが、大手民間銀行の1つは2.5%前後にとどまるとみている。この低成長が税収の伸びを抑えるため、財政赤字は拡大傾向だ。さらに、12年に前年の3.4%から6.3%へと大幅に拡大した経常収支赤字の国内総生産(GDP)比は13年には6.5%に達すると予想される。この双子の赤字がマクロ経済の不安要因だ。