政府は9日、東京電力福島第1原発事故の避難指示地区内にある高濃度の放射性物質が残った農業用ため池やダムの利用再開に向け、国の交付金を投入する方針を決めた。福島県の地元自治体は定住の担保となる営農再開に向け、ため池の除染を再三求めていたが、生活空間の除染を優先する国と平行線をたどっていた。政府はため池の浄化作業に取り組むことで、農家の早期帰還、定住の促進を図る。
活用する交付金は、復興庁が4日から始めた「福島再生加速化交付金制度」。放射性物資を取り除いて水を利用するフィルターの設置や汚染土の流出を食い止める事業などに使う。
政府は同制度のために平成25年度補正予算と26年度予算案で計1600億円を計上。避難指示区域の地域ごとの復興の進(しん)捗(ちょく)に合わせた自治体主導の事業に手厚く支援し、福島の再生を加速させることを目的にしている。
農林水産省や福島県の調査結果によると、住民が避難した避難指示区域内では108カ所のため池などの底の土1キロあたりでセシウム8千ベクレル超が検出された。8千ベクレル超は国の責任で処分する指定廃棄物に相当する。10万ベクレルに達したのは9カ所あり、最高は双葉町の39万ベクレルだった。
環境省は「住居周りなどの生活空間の除染が優先」として、ため池の底の土については除染作業の対象とせず、国の財政支援が受けられない状況が続いた。
ただ、ため池やダムの汚染物質は底に沈む特性があり、上部の水はフィルターを通せば農業に利用できる可能性があるという。
政府は昨年末、原発事故の避難者に対し「全員帰還」の方針を改め、帰還支援と新生活支援の2つの支援策を実施することにした。底の土の除去は今後の課題としつつ、農家の帰還の障害となっているため池の利用再開に向け、浄化作業に本腰を入れる。
根本匠復興相も9日、NHKの番組で、ため池の除染について「農水、環境両省と話している。新方針を出す」と表明した。