政府は14日、6月にまとめる成長戦略の目玉として法人税の実効税率引き下げを盛り込む方針を固めた。特定の業種に限って法人税を軽減する租税特別措置の見直しなどで引き下げの原資を捻出し、財政健全化と両立させながら、早ければ平成27年度からの実施を目指す。経済界からは10%程度の引き下げを求める声が強いが、下げ幅は代替財源との見合いで今後詰める。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に伴う円安の進行などで企業業績は改善基調だが、設備投資や賃金の伸びは小幅にとどまっている。企業の足かせとなっている高い法人実効税率の負担軽減で投資や賃上げの余力を底上げし、景気の好循環を後押しする狙いがある。
日本の国・地方の法人実効税率は、復興特別法人税の前倒し廃止で26年度に現在の38・01%から35・64%(東京都)に下がる。ただ中国や韓国の25%程度に比べて依然高く、経済界からは国際競争力を阻害しているとの批判が根強い。
このため安倍首相は一段の実効税率引き下げに意欲的で、1月にスイスで開かれたダボス会議で「本年、さらなる法人税改革に着手する」と述べ、引き下げを事実上、国際公約した。
ただ、財務省の試算では、実効税率を1%下げると国・地方で約4700億円の税収減になる。経団連や経済財政諮問会議の民間議員が主張するアジア並みの25%程度まで税率を下げると、現在の国の税収全体の1割に相当する5兆円の税収減になるという。
有識者の中には、引き下げで企業収益が上向き、税収は増えるとの意見もあるが、減税分が企業内にため込まれる懸念は残る。このため具体的な下げ幅は、税収減を穴埋めする代替財源との見合いで調整する。
代替財源は、現行の法人減税策の見直しが有力候補だ。租税特別措置の縮小・廃止や、赤字企業の税負担を減らす欠損金の繰り越し控除の縮小など課税ベースの拡大を軸に調整。それでも十分な財源を確保できなければ、高額所得者に対する株式の配当や譲渡益への課税強化なども検討する。