むしろ我々が知りたいのは中国の今後の長期的なトレンドである。日本が停滞している間にGDP(国内総生産)で追い抜き世界第2位となった中国は、このままのトレンドを維持してやがてアメリカを追い抜き世界に覇を唱えるのだろうか?
考えてみれば昨今の日本の将来に対する漠然とした悲観論の背景には勢力を拡大する隣国中国があったし、またアジア各地で頻発する中国の領土拡張意欲に関する周辺国家との摩擦の根底には、中国自身の大国としての将来に対する漠然とした期待があるはずである。そしてそれは我々が武力を持っていなかっただけですでに1980年代に経験したものに似ている。
津上俊哉氏の新刊『中国停滞の核心』(文春新書)では中国の今後の7%成長は困難であると指摘している。これを言い換えれば中国がGDPでアメリカを追い抜く日は仮にあるとしても2030年ではなく相当先延ばしになるということだ。
氏は03年に『中国台頭』を著し、11年には『岐路に立つ中国』で転換点を指摘し、12年には『中国台頭の終焉』において「中国がGDPで米国を抜く日は来ない」と断言していた。