【珍島(韓国全羅南道)=加藤達也】旅客船「セウォル号」が沈没した海域から約20キロにある韓国全羅南道の珍島南部の港では、事故から3日目の18日、遭難した乗客の家族をはじめ、支援ボランティアや行政当局、さらに海洋警察、海軍など救難機関の関係者ら数千人が集まって救出へ向けた作業にあたるとともに、遭難者の無事を祈った。
曇天の珍島港。数百メートル沖に靄(もや)にかすむ海洋警察などの艦艇が停泊する。港に面して、海岸には救護や炊き出しのために張られた無数のテントが並ぶ。その一つでは遭難者の家族らが救難機関側と会議机を挟んで向き合い、要望の聞き取りや状況説明が行われていた。
疲労感といらだち
「なぜ、船内に潜水士を入れないのか」「軍には大型艦があるのだから、それでセウォル号の船体を浅い場所まで押して救助作業ができるのではないか」
やりとりは、集まった多くの人に聞こえるようにと、マイクを通じて行われる。遭難者の家族側の矢継ぎ早の口調からは、疲労感やいらだちが伝わってくる。
救難機関側は「ダイバーは2人一組で潜るが、作業による疲労で十数分しか潜れない。ダイバー1人につき、遭難者1人を救助する」と説明する。高い波と速い潮流の中での過酷な作業であることは分かるが、やりとりを見守っていた女性は納得せず、家族側の口調は次第に激しくなっていった。
過労で救護所を訪ねた女性は、政府側の発表や説明がコロコロ変わることに「気持ちが折れそうだ」と話す。