クリントン夫妻以来、18年ぶりに国賓として迎えたオバマ米大統領。24日に開かれた日米首脳会談後の共同記者会見では、安倍晋三首相と笑顔で視線を交わす場面も見られたが、日米間には両国が覚悟を持って議論すべき課題が山積している。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や、尖閣諸島をめぐる問題、北朝鮮による拉致問題…。国内の関係者は、両首脳が下す決断の行方を見守った。
■尖閣諸島
「大統領自らが語った以上、何か衝突が起きれば米国と中国との問題になる。抑止力になることは間違いない。安倍首相がぶれずに主張してきた成果だ」
尖閣諸島(沖縄県石垣市)を「日米安全保障条約の適用対象」と明言したオバマ氏。同市の中山義隆市長(46)は日米首脳会談の成果を評価した。
地元漁師も一定の評価をしている。「これまでの大統領にはない踏み込んだ発言だと思う。日本の漁船が尖閣で漁をする、当たり前の行為ができる環境になることを望みたい」と八重山漁協元組合長、比嘉康雅さん(57)は歓迎する。
尖閣諸島近海では本マグロ漁のシーズンが始まったが、中国公船が連日巡航する。比嘉さんは「多勢に無勢で漁はできない。それでも、日本人が尖閣に行かなくなれば、あっという間に中国に乗っ取られてしまう」と怒りをにじませた。
現状は変わらないとの悲観論もある。漁師の藤本浩さん(46)は「安心の度合いは増すが、中国船を追い返せない以上、中国船は来続ける。漁獲高も停滞し、漁師の生活は厳しさを増している」と語った。
■TPPの行方は
TPPで焦点となっている牛・豚肉の関税は引き下げられるのか。畜産農家は不安な気持ちで日米間の協議の行方を見守った。
「私たちが何を言っても決まるときは決まる」。北海道標(しべ)茶(ちゃ)町でホルスタインを中心に約3500頭の肉用牛を育てる斎藤丈(たけし)さん(49)はあきらめ口調だ。ホルスタインは肉質や価格で米国産と競合する。「米国産に一気にシェアを奪われるとは思わないが、やっぱり関税の引き下げは勘弁してほしい」と複雑な心境を明かした。
鹿児島県伊(い)佐(さ)市でブランド豚「かごしま黒豚」を育てる沖田健治さん(55)は「他に負けない豚を育てればいいという人がいるが、安い肉より高くて良い肉を買う人はどれほどいるのか」と不安を吐露。交渉の行方を気にしつつ「どんな結果でも厳しい状況になる。安心、安全な豚を育てて外国産に対抗するしかない」と気を引き締めた。
一方、米国産と豪州産の輸入牛肉を使った牛丼店「すき家」を全国展開するゼンショーホールディングス(東京都港区)の広報担当者は「よりよいものを安く提供できるようになるので、関税引き下げは歓迎したい」と話した。
■拉致問題では米大統領も怒り
拉致被害者家族との面会はわずか10分程度だったが、オバマ氏は出席した家族一人一人と握手を交わし、同じ親としての立場から拉致問題解決に向けた協力を約束した。
面会で、横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(78)は5枚の写真をオバマ氏に差し出した。北朝鮮に連れ去られる前のめぐみさんが写った2枚、北朝鮮が出してきた成人後とみられるめぐみさんを撮影した2枚、めぐみさんの娘のキム・ウンギョンさん(26)が平成14年に登場したときの写真だった。
早紀江さんは写真を見せながら、めぐみさんがさらに年齢を重ねていることに触れ、「それだけの時の流れがあるんです」と説明。オバマ氏は写真を一枚ずつ見つめ、こう話したという。「大変なことだ」
面会で自身にも2人の子供がいることを紹介したオバマ氏は親として、「被害者のことを思うだけで、いてもたってもいられない気分になる」とも明かしたという。田口八重子さん=同(22)=の兄、飯塚繁雄さん(75)は「被害者家族の悲しみを自分のものにしていたのではないか」と印象を振り返った。