【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(15) (2/3ページ)

2014.5.9 05:00

パヤー(寺院)の周辺に並ぶカドーブェ店。恰幅のよい麦わら帽子の男性やカメラの方を向いている女性は店主たちで、マ・トゥー・ス・チェーのメンバーである(高橋昭雄氏撮影)

パヤー(寺院)の周辺に並ぶカドーブェ店。恰幅のよい麦わら帽子の男性やカメラの方を向いている女性は店主たちで、マ・トゥー・ス・チェーのメンバーである(高橋昭雄氏撮影)【拡大】

 つまり、このス・チェーはパヤー(寺院)周辺の門前町の繁栄がなければそもそも発生しなかったのである。その意味ではこれもパヤーの恵みといえるかもしれない。

 マ・トゥーは25歳でティンダウンジー村の左官と結婚して村にやってきた。その前はチャウセーの市場の片隅で、小さな屋台で揚げ物を売っていた。この時に市場の商人たちが行っていたス・チェーのノウハウを学んだのだという。

 彼女は毎日夕方になるとメンバーの店を1軒ずつバイクで回ってその日の掛け金を集める。そして10日に1度、くじ引きであらかじめ決められていた順番に従って、1人が160万チャット(1万チャット×16人×10日)を出金する。利子はないが、構成員はくじ運に恵まれて早めにまとまった金がもらえることを期待してこれに参加する。16人全員が出金し終えたら、もう1度メンバーを募って、くじ引きをして、また新しい回転が始まる。

 ◆高利貸の資金源に

 ただしマ・トゥーはくじを引かない。ス・チェーの組織者である彼女は、必ず最初に160万チャットを受け取るという特権を持っているからである。それこそが、彼女が金融講を組織して毎夕掛け金の督促に行くインセンティブとなる。

 彼女の本業は高利貸で、1番くじで引き出した160万チャットはその元手となる。その利子は借り手によって異なるが、10日間で10~15%という高利だ。つまり高利貸の資金稼ぎの場としてス・チェーが使われている。

 チャウセーの街中には掛け金1日5000チャットから10万チャットに至る種々のス・チェーがあるが、私が見聞した限りではすべて金貸しによって組織されている。

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