医療・介護総合法案を自民、公明の両党で可決した衆院本会議=15日(しんぶん赤旗提供)【拡大】
ところが、政府は特養の整備・増設を抑制し、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、低所得者が利用できない施設の整備ばかり推進してきました。特養入所を「要介護3以上」に限定すれば、大量の高齢者が、今度は「待機者」にもなれないまま、放置されることになってしまいます。こんな改悪はただちにやめ、特養の抜本的増設へ、国がかじを切るべきです。
この法案は、在宅でも施設でも、利用料の大幅な負担増を盛り込んでいます。
政府が検討する2割負担導入のラインは、高齢者全体の2割に及びます。とうてい、「高額所得者」と呼べる方々ばかりではありません。要介護の高齢者は、定率の利用料のほかにも、医療費の窓口負担や通院費、ショートステイの食費、おむつ代など、さまざまな自己負担を強いられています。年金削減の被害も直撃しています。介護利用料の負担増は、サービス利用の抑制を引き起こし、重症化をもたらし、さらなる介護保険財政の悪化を招きかねません。
◆離職が起きない環境に
総務省の調査でも、介護を理由とした離職は年間10万人。いまや介護は、現役世代の深刻な不安ともなっています。介護制度は、給付対象の限定や利用料の負担増でなく、公的保障を充実してこそ、家族の介護負担を解消し、現役世代の就労・社会参加を促進できるのです。介護労働者の処遇改善や介護施設の増設は、国民の所得を増やし、関連産業の需要を誘発して、地域経済に好循環をもたらすものでもあります。
「介護離職」などの起こらない国を。公的介護のサービス切り捨てではなく充実へ。政治の転換が必要です。
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【プロフィル】小池晃
こいけ・あきら 1960年生まれ、東京都出身。東北大学医学部医学科卒。東京勤労者医療会代々木病院などを経て現在、参議院議員、日本共産党副委員長・政策委員長。著書に「どうする 日本の年金」(新日本出版社)など。