国会会期末に向けて安倍晋三内閣は、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)と成長戦略、規制改革の方針の3つを閣議決定する。いわば、今後のアベノミクスの目指す方向を示す「政策パッケージ」で、これをベースに年末に向けた予算編成や税制改正、臨時国会や来年の通常国会での法律改正など具体的な作業が始まる。
今回の政策パッケージで目を引くのが、日本企業の経営のあり方を根底から見直す方向性が示されていること。法人税率の引き下げを打ち出す一方で、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化を打ち出した。税率を国際水準に引き下げる代わりに、日本企業の経営も国際水準にするよう促していくというものだ。
6月3日に経団連の定時総会に出席した安倍首相は、「コーポレート・ガバナンス指針(コード)の策定を成長戦略に位置付ける」と表明した。自民党の日本経済再生本部(本部長・高市早苗政調会長)が5月末にまとめた提言を引き取った格好だ。ガバナンス・コードは「日本企業のあるべき姿(ベスト・プラクティス)」を示すもので、具体的な内容は今後、有識者会議で詰められるが、独立した社外取締役の活用や株式持ち合いの解消などを促す。
経団連はもちろん、法人税率の引き下げには賛成で要望もしているが、ガバナンスの強化には抵抗している。社外取締役の義務付けにも最後まで反対した。それを承知で、本丸に乗り込んで注文を付けたのである。当日は東レ会長の榊原定征氏を新しい経団連会長に選んだ総会。安倍首相に機先を制される格好になった。