なぜ、安倍内閣は成長戦略にコーポレート・ガバナンス・コードを盛り込むのか。背景にあるのは、経営陣にプレッシャーがかからず、低収益に甘んじている、という見立てだ。社外取締役など外部の目が入れば、説明が付きにくい不採算事業などを抱え続けることができなくなる。すべての原因はガバナンスの「緩さ」にあるというわけだ。
これに最近、同調しているのが財務省。安倍首相に法人税率引き下げを強く求められているが、ならば企業の規律を高めるのが先だ、というのだ。麻生太郎副総理兼財務相は「法人税を下げた場合、何に使うのか。内部留保に回るのなら何の意味もない」「だからこそコーポレート・ガバナンスが必要だ」と強調している。ガバナンスが強化され、企業の収益率が改善し、利益が増えれば、当然のことながら税収は増える。ガバナンス改革は税収増に直結する。
そこで俄然(がぜん)注目されるようになった経営指標がROE(株主資本利益率)である。株主資本(自己資本)をいかに効率的に使い利益を稼いだかを示す指標。昨年6月の成長戦略で「グローバル企業」で構成する新しい株価指数の導入が提言され、今年1月から算出が始まった「JPX400」では、ROEの高い企業が選ばれる仕組みになった。投資指標として使う投資家が増えており、企業経営者の間でもROE引き上げが大きな課題になりつつある。
ROEを引き上げるには利益を上げる方法もあるが、一方で資本を減らす方法もある。無駄に手元で眠っている資金で自社株を買って消却すればROEは上がる。麻生財務相の不満に答えることにもなる。実は、米国の長年の株高の背景にも自社株消却があった。
ROE時代が本格的に到来すれば、利益が増え、税収も増える。一方で自社株消却が増えれば、株価も上昇する。それが従業員の給与増や、消費増につながれば、アベノミクスの目指す経済好循環は実現する。そんな狙いがガバナンス強化の背景にある。(ジャーナリスト 磯山友幸)