軍事政権下にあるタイからカンボジア人労働者が一斉に帰国を始め、タイ・カンボジア両国の経済に影響を与えている。国際移住機関(IOM)などによると、帰国者の数は6月中旬までに20万人以上に及ぶとみられる。その多くが違法就労者で、軍事政権の取り締まり強化を恐れて帰国した。
◆拘束・投獄の恐れ
地元紙の報道やIOMによると、タイとの国境にあるカンボジアのポイペトには、タイ各地から帰国しようと集まったカンボジア人労働者が押し寄せている。その数は、多い日には1日4万5000人以上に達し、国境は混乱状態に陥った。現在、1日の帰国者数は減りつつあるが、それでもタイを脱出する人の流れは止まらないという。
発端は、タイの軍事政権が違法労働者の取り締まりを厳格化する姿勢を示し、取り締まりの際に拘束・投獄される、という情報が広がったことだ。クーデターで全権を掌握したタイ国家平和秩序評議会は「逃げると撃たれる」など暴力的な弾圧の噂を否定している。ただ、地元紙が伝える帰国者の証言によると、不法滞在者取り締まりの際に身柄を拘束され、釈放と引き換えに金銭を要求されたという人も少なくないようだ。
タイ国内の建設現場で働いていた35歳の男性は、カンボジアデイリー紙にこう証言した。「現場にタイ軍が来て約300人のカンボジア人を集め、『1人300バーツ(約940円)を払わなければカンボジアに帰さない。払わなければ拘束する』と命じた」。男性は、そこから国境へ向かうバスに乗るためにさらに1700バーツを支払ったという。また、タイの漁船で働いていた男性(25)は、他の30人余りの労働者とともに集められ、「暴力は振るわれていないが、1人3000バーツを要求された」と語った。