その一方、中国と付き合うのに、歴史観や軍事力だけの対抗意識一辺倒では果たして日本の国益にかなうかと問わねばなるまい。力とプライドの不毛な対決よりも、この「引っ越すことのできない隣人」がいずれ付き合いやすい「普通の隣人」になっていくよう手助けをする方が、日本の国益を考えた場合、よほど賢明ではないか。
◆民主化へ後押しを
中国の内部では、民主化、自由化、近代化への欲求が相当強く渦巻いており、インターネットと海外旅行の普及で一般国民への世界常識の浸透もかなり進んでいる。言論弾圧など政権の締め付けで一進一退があるとはいえ、自由民主化への圧力はもはや止めることができない。
それなら、日本にとっても好ましいこの流れを後押ししてやればよい。それには日本が何をすべきか。参考になりうるのは欧米諸国の取り組みである。
一例をあげれば、フランスは中国の裁判官を5年間で100人招待し、研修事業を実施してきている。中国の近代化の大きな妨げの一つである法治体制の遅れに着目し、その担い手たちに先進国の例を学ばせて自国の司法改革、ひいては政治改革に少しでも役立たせようというのが狙いである。
同じ狙いで、欧州連合(EU)諸国は中国国内の弁護士、非政府組織(NGO)、新聞記者などにも協力支援の手を差し伸べ、言論の自由、社会正義、女性の権利、身体障害者の権利など、中国が立ち遅れているさまざまな社会課題に挑戦し、苦闘する各界の人々をサポートしている。さらに環境問題では、北京の米国とフランスの大使館は独自の大気測量を行い、数値を発表することで、内政干渉のそしりを受けることなく、中国国民の環境問題意識を高めた。腰の重かった地元当局も大気汚染問題に対処せざるを得ない状況となった。