原発審査の進捗状況【拡大】
原発の再稼働に向けた原子力規制委員会の安全審査で、合格の2番手が一向に決まらない。7月に合格内定を真っ先に得た九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の事実上の合格証となる審査書案もまだ確定されず、審査の停滞があらわになっている。9月中旬には地震・津波の審査で厳しい姿勢を見せてきた規制委の島崎邦彦委員長代理(68)が交代するため、事業者はスピード審査を期待している。
昨年7月に始まった審査はすでに1年以上を過ぎ、公開の審査会合は8月28日で計133回を数えた。29日に予定されていた134回目の会合は、島崎氏が体調を崩し休会した。規制委関係者は「疲労とストレスが相当たまっている」と明かす。
地震学の権威でもある島崎氏は審査の中で、事業者が示した基準地震動(想定される最大の揺れ)をことごとく退け、上方修正を迫ってきた。ただ9月に任期2年を満了し、東北大の石渡明教授(61)に交代する。石渡氏は地質学者であり、事業者からは「島崎氏よりくみしやすいのでは」との声がある。
というのも、基準地震動の確定がこれまでの審査の趨勢を握ってきた経緯がある。川内が1番手を獲得したのは、当初申請の地震動540ガルから620ガルに科学的知見を度外視する形で、「えいやっと引き上げた」(九電担当者)からだ。当初1番手の最有力だった四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が後れを取ったのも、島崎氏ら規制委側と意見を戦わせて地震動が決まらないためだ。
地震動が規制委から了承されたのは、川内のほかに関西電力高浜原発3、4号機(福井県)と九電玄海原発3、4号機(佐賀県)。高浜の2番手が期待されたものの、津波想定に計算ミスが見つかり、いまだ審査書案の作成に入れない。
審査を申請済みの原発は計13原発20基で、いずれも事業者側の準備不足も目立つ。2番手争いを繰り広げている加圧水型軽水炉(PWR)の5原発と異なり、申請の遅かった沸騰水型軽水炉(BWR)の7原発はまったく合格時期が見通せない。
BWRは事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ型で、事故に備えたベント装置が焦点になり、PWRよりさらに審査に時間がかかる。BWRの審査チームは10人程度しかおらず、審査体制の不備も今後の課題となっている。(原子力取材班)