改正の背景として、製造業などと異なり特殊なノウハウや膨大な資本を必要としない卸売業に対し、インドネシア国内業界団体が外資参入障壁を求めてきたことが挙げられる。
インドネシア商工会議所は、政府が卸売業の外資出資上限を7割に強化する改正案を検討していた際、3割まで引き下げるよう要請した。中小企業団体である経営者会議は、流通・小売りの規制強化を要請。政府が改正案で中小企業の多い業種を外資に開放しなかったことを評価していた。
今後、外資企業が卸売業で進出する際は、現地パートナーを探さなければならない。また、外資企業は経営の主導権を握れなくなった。
ただし、業態を絞り込むことによって、卸売業でも外資100%による進出可能性も残されている。インドネシア投資調整庁が今年5月に現地日系企業向けに開催した説明会によると、「貿易会社」は卸売業の定義に含まれず、(1)インドネシアの国外から輸入で仕入れて国内で販売(2)インドネシアの国内で仕入れて国外へ輸出-の2つの場合は貿易会社として扱われ、外資100%での進出が可能とのことだった。
とはいえ、インドネシアは縦割り行政で、各行政担当官の裁量により判断が変わることも多い。今後の実例を注視する必要がある。
【焦点】
インドネシアでは、ネガティブリストをはじめ各種規制が頻繁に改正されている。新規ビジネスを展開する上で、外資規制の把握は欠かせない。加えて、改正の背景や影響を検討することも必要だろう。
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【プロフィル】林大幹
はやし・だいき 2010年から国内の高速道路会社に勤務。主に高速道路の新設・管理に伴う法手続き担当。2014年からみずほ銀行で日系企業の投資支援業務に従事。