父島でダイビングショップを営む男性も、不審船を目の当たりにした一人だ。9月22日、客を連れて訪れた嫁島付近で東の水平線から不審な船が姿を見せた。5隻、10隻、15隻-。鉄製で中国旗を掲げた船団は、あっという間に20隻程度に膨れあがった。
「中国から小笠原沖まで航行して採算が取れるのはサンゴしか考えられない」
東海大海洋学部の山田吉彦教授(海洋政策)は中国船とみられる船の狙いがサンゴの密漁だと分析する。
日本産のサンゴは品質が良く、中国では高値で取引される。日本珊瑚(さんご)商工協同組合によると、「宝石サンゴ」とも呼ばれる赤サンゴの卸値は10年で約5倍に上昇。平成24年の平均取引額は1キロ約150万円で「金より高値で取引されることもある」(同組合)。
宮古島(沖縄県)沖や五島列島(長崎県)周辺もサンゴの生息地だが、山田教授は「警備が厳しくなった結果、小笠原まで足を延ばすことになったのではないか」と指摘。「サンゴは貴重な資源であると同時に、海底の形状にも影響する。サンゴの乱獲は生態系を壊すことにもつながる」と警鐘を鳴らす。