物価の押し下げ効果が大きい原油安だが、日銀にとっては頭の痛い現象だ。約3カ月もガソリン値下げが続き、8月の生鮮食品を除く消費者物価指数の伸び率(消費税増税分を除く)は前年同月比1・1%と低迷。9~10月には1%を下回る可能性が出ており、日銀が掲げる「2年で2%」の物価上昇目標の達成には“黄信号”がともる。
消費者物価の上昇率は4月には1・5%に達した。だが、円安による輸入物価の上昇効果が薄まると伸び率が鈍化。日銀は人手不足に伴う賃上げなどで、今年度後半には物価上昇のペースが上向くとみていたが、急速な原油安は誤算だ。
黒田東彦総裁はかつて「1%を割る可能性はない」と市場の懸念を一蹴したが、今月7日の記者会見では「原油安が物価上昇に下押し圧力として効いているのは確か」と認めた。
物価上昇率が1%を下回れば、市場でくすぶる追加緩和観測が勢いづくが、SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「円安を助長する追加緩和は政治的に難しくなっている。2%の目標を降ろさずに2年の達成期限を延ばす方向に動く」と分析している。(藤原章裕)