11日閉幕したAPEC首脳会議は、FTAAP構想の早期の実現を目指すことで合意した。しかし、その土台となるはずのTPP交渉は越年が確実となり、TPPに対抗心を示す中国も、本来は貿易自由化に前向きとはいえない。アジア太平洋地域の自由貿易圏構築への道筋は険しいのが実情だ。
「質の高いルールを規定するFTAAPの最終的な実現に向けて積極的に貢献していきたい」。安倍晋三首相は11日の会議でこう発言し、自由貿易圏の構築に強い意欲をみせた。
APECに参加する21カ国・地域は世界の人口の約40%、国内総生産(GDP)の約58%、貿易量の約47%を占める世界の“成長センター”だ。21カ国・地域の経済統合を進めるFTAAPは、域内のさらなる成長のエンジンとして期待される。
2010年のAPEC首脳宣言では、TPPをFTAAPの実現に向けた重要な基礎の一つと位置付けた。
しかし、今回のAPECにあわせて開かれたTPP交渉は、交渉参加12カ国による首脳、閣僚会合で年内の大筋合意を断念した。さらに合意の具体的な目標期限も設定を見送った。残されているのは各国の利害が絡む難題ばかりで「交渉のスピードはどうしても落ちる」(甘利明TPP担当相)のが実情だ。
首脳会合でまとめた声明は「TPPの高い水準を採択する準備ができている、他の域内のパートナーを加入させ得る」とし、12カ国以外にも門戸は開放されていると訴えた。
TPPに参加表明していない中国やロシアが、日米主導の通商ルールづくりに不快感を示しているからだ。
特に今回のAPEC議長国の中国は、期間中に韓国との自由貿易協定(FTA)を妥結し、日米に対抗してFTAAPを主導する構えをみせる。ただ、中国は国有企業が国内市場をほぼ独占する経済体制の急激な自由化は避けたいのが本音で、高水準の貿易自由化を追求する参加国の支持を得るのは容易でない。
(北京 本田誠)