10月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、消費税率引き上げの影響を除いた上昇率が1年ぶりに1%を割り込んだ。足元では原油価格が急落しており、市場では「来春の0%台前半」を予想する声も出始めている。デフレ脱却の道筋はまだ見えない。
「せっかく(デフレ脱却の)光明が見え始めていたのに」
石油輸出国機構(OPEC)が27日、協調減産を見送り、原油の国際価格は急落したことに、政府関係者はこう落胆した。
原油安のような現実の物価下落がインフレ期待を抑えかねないという理由で、日銀は10月末、先手を打つ形で追加の金融緩和に踏み切ったばかり。一方、政府は消費税率10%への引き上げを1年半先送りし、消費回復を優先した。
政府・日銀がデフレ脱却の糸をたぐり寄せようとしているところに、原油安が冷や水を浴びせた格好になった。
28日には、複数の金融機関が物価上昇率1%割れが当面続くとの見通しを示した。みずほ証券では、エネルギー品目の価格水準を据え置いて試算した場合、来年5月には0・4%前後まで鈍化すると予測。上野泰也チーフマーケットエコノミストは「OPEC減産見送り後の一段の原油下落を見込むと、さらに低くなる」との見立てだ。
ただ、原油安は、資源輸入国の日本の経済にはプラスに働くという側面もある。
宮沢洋一経済産業相は28日の閣議後会見で、「円安を考えると、原油価格が上がらないことはありがたい」と述べた。原発停止で燃料の輸入が高止まりしているエネルギー供給事情を踏まえ、「石油市場をとりまく情勢を注視していく」と話した。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「消費税再増税の先送りと原油安のメリットで、家計の所得環境は平成27年4月以降は明るさもみえてくる」と指摘する。
ただ、原油安などで物価が上がってこないようだと、政府・日銀が目指すデフレ脱却の道筋も遠くなりかねない。南氏は「日銀が目指す来年度後半の2%達成は厳しい」とし、目標変更か、もう一段の追加緩和を予想している。