◆背景に小国の誘致
多国籍企業の課税逃れをめぐっては、企業が税負担の低い国を求めるばかりでなく、産業基盤の弱い小国が企業誘致のために優遇措置を取ることも問題の背景にある。人口約50万人のルクセンブルクなどはその最たる例だが、2008年の世界金融危機で各国が財政難になると、納税の公平性の観点から厳しい視線が向けられるようになった。
欧州委はこのため今年6月、アイルランド、オランダ、ルクセンブルクがそれぞれ米アップル、米スターバックス、伊自動車大手フィアットと結んだ優遇措置が公正な競争を阻害する不正な国家補助に当たるとの疑いで調査を開始。10月にはインターネット通販のアマゾン・コムに対するルクセンブルクの措置の調査も加わった。
国際社会の批判やEUからの圧力を受け、優遇措置をとる国も対処を迫られている。
アイルランドは10月、「ダブル・アイリッシュ」と呼ばれる優遇措置を来年廃止することを決定。事業の運営会社と知的財産管理の関連会社の2社を同国で設立すれば、海外の租税回避地(タックスヘイブン)に置いた関連会社の税法上の本拠に利益を移転しても非課税となる仕組みで、EUなどから「抜け道」と強く批判されていた。
同国のヌーナン財務相は優遇措置が「国の評判になるものではなくなった」と語っており、従来は企業を引き寄せてきた措置が、今ではむしろ国の評価を落とすものとなったことが、廃止の理由だったようだ。
とはいえ、加盟国が優遇税制を取りやめても、企業側がさらなる手段を見つけ、いたちごっこになる可能性もある。ただ、EUが締め付けを厳しくしている現状を踏まえ、専門家からは「問題は企業が『次にどこに行くか』となるが、EUではもう他に場所はないのではないか」との声も上がっている。(ベルリン 宮下日出男)