大きな茶こしを振りかざして、約1メートルの高さからコーヒーを落下させる伝統的なコーヒーのいれ方。店によってはコーヒー職人の技を楽しみながらコーヒーを飲むこともできる=インドネシア・アチェ州バンダアチェ、コーヒー屋台「ブルリアン」(横山裕一撮影)【拡大】
市街地を中心にカフェが増えたのはここ10年。現地紙コンパスによると、約30年にわたった独立運動による紛争が04年の津波被害をきっかけに翌年終結し、夜も安心して出歩けるようになったのが要因という。さらに、アチェのコーヒーをより広めようと11年からコーヒーフェスティバルが開かれるようにもなった。伝統的なコーヒー屋台やカフェだけでなく、生産者や製造業者も出店してアチェのコーヒーを披露し、地域の活性化と観光客の誘致を狙う。主催者は「コーヒーを飲む習慣はアチェの人々の文化だ」とまで言い切る。
◆人々の平和を象徴
アチェのカフェは朝から晩まで客足が途絶えない。夜は夕食後の憩いの場、昼間は商談をはじめ政治家や文化人など仕事の場となる。「アチェの人々はカフェで問題を解決する」といわれるほどだ。
大学近くのカフェチェーン店「ザキル」は、午後から夜にかけて学生たちで満員となる。約200席の店内では、学生たちが無料インターネット回線を利用して勉強に趣味に持参のパソコンをのぞき込み、さながら教室のようになる。コーヒーはどこのカフェでも1杯約20~60円。手軽な値段で長時間楽しめるのも人気の理由だ。
乱立するカフェの中で根強い人気を誇るのが、創業40年余りの「ソロン」。「バンダアチェに来てソロンのコーヒーを飲まずしてどうする」といわれるほどの有名店。現在、支店を含めて6店舗を構える。コーヒー豆を煎るときにトウモロコシや砂糖、バターなどを加えて香りを整えることによる独自の味が人気を呼んでいる。常連で食堂経営のアファンさんは「毎日、午後の空き時間や自分の店を閉めた後に必ずコーヒーを飲みに来る」と話す。
コーヒーを飲みながらおしゃべりを楽しみ、夜が更けていくカフェの光景は、災害や紛争を乗り越えたバンダアチェの人々の平和を象徴しているかのようだ。(在インドネシア・フリーライター 横山裕一)