【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(24) (3/3ページ)

2015.3.20 05:00

 中国での仕事は男女ともサトウキビやトマトの収穫、草取り、家畜の世話といった農業労働が多いが、男は左官や大工、女は給仕や料理人といった職種に就く者も増えている。農業労働の場合、まかない付きで日当が1万チャット、非農業部門ではそれ以上であるという。そして後者に就業すると、農繁期になっても村に帰ってこなくなる。

 生葉やラペッソーの価格に比べて労賃が上がり、さらに高賃金の中国への出稼ぎ者が、特に下層から多く出ているという、この7年間の大きな社会経済変化の結果、茶畑の保有面積の多寡によって階層分けができるという状況がなくなりつつある。農地がなくても、出稼ぎ所得で近代的な家を建てたり電気製品やバイクなどを整えたりする村人が続出している。

 だが、中国行きには大きなリスクが伴う。中国人の農家に売られて子供を2人産んだとたんに放り出された娘や、マラリアにかかって村で寝込んでいる若者に出会った。また、近隣のゼーバンカウッ村では中国に行った100人以上の青年たちの半分が麻薬中毒になって帰ってきた。それでも貧困から抜け出すために村人は中国を目指す。現世での経済的成功に執着しない敬虔(けいけん)な仏教徒であるパラウン人の社会も、経済開放とともに急速に変化しつつある。(随時掲載)

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