【検証 8% 消費増税1年】(上)
3月最後の週末。「ジャンク通り」と呼ばれる東京・秋葉原の路地裏で閉店セールが行われていた。「秋葉原で2番目に安い店」のうたい文句でパソコンファンの支持を集めたパソコン用パーツ販売店「ZOA秋葉原本店」が3月末、1997年12月の開店から17年の歴史に幕を閉じる。
パソコンが一般家庭に普及し始めた約15年前、同店は「週末となれば、商品の棚出しもままならない数」(古参スタッフ)の来店客でにぎわった。だがここ数年は売り上げが激減し、現在は「ピーク時の2~3割程度にすぎない」(林理貴也店長)という。
市場変化に影響
自動車やパソコンといった耐久財は、昨年4月の消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減の影響を受けやすい。だがZOA(静岡県沼津市)の安井明宏執行役員は「増税影響は最後の一押しにすぎない」と分析する。
より影響を受けたのは、パソコンをめぐる市場の変化。手ごろな価格で高性能なパソコンを求める愛好家に人気の自作用パーツは、大手メーカーが低コストで造る「そこそこの性能」のパソコンに取って代わられた。急速に普及したネット通販も、わざわざ秋葉原まで足を運ぶ動機を薄れさせた。
同社は通販事業を充実させ常連客に利用を促すが、「セールで来たのが数年ぶりという常連も少なくなかった」と林氏。閉店後、空きテナントには別のパソコン販売店が入居する。
「ほとんどのエコノミストが予想しなかった事態」。日本総合研究所の湯元健治副理事長は昨年11月、7~9月期の実質国内総生産(GDP)の速報値が2期連続マイナスとなったときの衝撃を振り返る。