この春、新エネルギー関連でわが国初となる2つの事業が九州で相次ぎ動きだした。一般家庭への販売もターゲットにする自治体主導の電力小売り会社が福岡県みやま市に誕生。燃料電池車(FCV)タクシーが福岡の街を走り出し、新エネの普及・拡大に弾みがつきそうだ。
みやま市は、銀行や民間企業と共同出資で電力小売り会社を設立した。市内のメガソーラー(大規模太陽光発電所)や住宅の太陽光発電設備で発電された電力を九州電力より1キロワット時当たり1円高く買い取り、2、3%安く販売する、というのが新会社のビジネスモデルで、4月1日に事業を開始した。当面は市の施設などを中心に供給し、電力小売りが全面自由化される来年4月からは一般家庭への電力販売にも乗り出す。
地方自治体がこうした電力小売り会社を設けるのは全国で初めて。西原親市長は「電力の自給自足を目指し、新たな雇用も創出したい」と意欲を燃やす。みやま市には5メガワットのメガソーラーがあり、住宅からの余剰電力も加えれば、好天なら市内の昼間の電力需要を賄えるという。新会社は4年後に売上高13億8000万円、営業利益4700万円とそろばんを弾く。
太陽光発電のほかバイオマス発電や風力発電も活用すれば再生可能エネルギーだけで24時間需要を賄うことが可能、とみやま市はみており、将来的には蓄電池を活用した24時間の供給体制を構築する考えだ。
ここ数年、電力会社への高値売電を前提にするメガソーラーが各地に乱立したが、買い取り価格の引き下げでメガソーラー事業に黄信号がともる。地域で生まれる電力をまとめて安定供給体制を作り地域に供給する「みやまモデル」は、地域のメガソーラーや住宅の発電設備を生かした電力の“地産地消”に道を開く可能性を秘めている。