本当にそれだけか。長官の訪中時期がAIIBの創設メンバーとなる申請の期限と重なっていたことなどを考えれば臆測を呼ぶのは当然だろう。長官はしかも、帰国後、「中国の指導者たちが、高い基準をめざし、(世界銀行などとの)共同事業を歓迎していることに力づけられた」と語っている。
米国内では、日米が創設メンバーへの参加を見送ったのは、誤った決断だったとの指摘が専門家の間でなされている。「オブザーバーとしての参加はあり得る」という予想もある。
米国は、かつてのニクソン訪中にみられるように、国益にかなうと判断すれば、すぐにでも方針を転換する。同盟国への配慮など、どこ吹く風だ。現在と40年以上前とでは日米の力関係も、置かれた状況も大きく異なる。いま、米国が日本の頭越しに中国と直接取引するような不信義に走る可能性は少ないだろうが、超大国の論理、国際政治の冷徹さは、古今を問わないことを忘れてはなるまい。
いずれ、米国はAIIBに参加を決めるか、何らかの形で強く「関与」する可能性が強いとみておくのが無難だろう。
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麻生太郎財務相がさきに、AIIBの意思決定の透明性確保などの条件付きで「中に入って協議していく可能性はある」と述べ、将来に含みを持たせた。
麻生氏の発言が、日本の参加を意図したものなのか判然としないが、米国の方針変更に備えて、硬軟両様に対応しようということなのかもしれない。
AIIBへの参加は、慎重に検討すべきことはいうまでもない。米国が参加しても、日本だけは最後まで思いとどまるという選択もあるだろう。
重要なことは、米国が方針を転換しても、うろたえることがないように覚悟を決め、準備しておくことだ。
キッシンジャー補佐官が訪中した71年の秋の国連総会で、台湾に代えて中国を加盟させる決議が可決された。米中接近の直後であり、この結果は当然予想されたが、日本はそれを承知のうえで最後まで台湾に義理立てして敗れた。
日本政府には、この時のように腹の据わった対応をしてほしい。