初めての訪中から帰国し、支持者の出迎えを受けるアウン・サン・スー・チー氏。政治手腕と関係なく、熱狂的に支持する人は多い=14日、ヤンゴン国際空港(AP)【拡大】
◆スー・チー首相案も
11月初めにも行われる予定の次回総選挙は、民政移管後で初の総選挙となる。政府・与党側はこれまでの改革の実績をアピールすることで、NLDの圧勝と政権交代を阻止するのに全力を挙げている。また、ヤンゴンの知識層やビジネスマンは、現時点での急激な政治の変化を懸念。「USDPとNLDなどの野党による連立政権を望む」という声をよく聞く。
今のところ、NLDの圧勝が確実視されつつあるなかで、政府・与党側からはスー・チー氏をいかに取り込むかで腐心する様子も見える。今年初めにはスー・チー氏の2人の子供にミャンマー国籍を取らせるよう提案したが、スー・チー氏は拒否している。また、最近では上院議長が、スー・チー首相案を提案。NLDとの連携を深め、次期大統領に最も近い一人とされるトラ・シュエ・マン下院議長も賛意を示しているという。
憲法には首相(総理大臣)職の規定はないが、連邦大臣の任命権は大統領が持っている。また、その職務も大統領が決めることができる。大臣には外国人禁止規定がないため、スー・チー氏が仮に大統領になれない場合、首相となる可能性もないわけではない。あくまで大統領の下の首相とすることで、ある程度コントロールできると踏んでいるのかもしれない。
もっとも、こうした構想も全ては総選挙の結果次第だ。選挙人名簿の不備が早くも指摘されるなどしており、公正な選挙がどこまで行われるのかも不透明だ。ミャンマーは暑い政治の季節に突入している。(編集委員 宮野弘之)