金融政策決定会合後に記者会見する日本銀行の黒田東彦総裁=7日午後、東京都中央区の日本銀行本店【拡大】
2016年度前半ごろを目標とする2%の物価上昇率の達成を描く日銀のシナリオの実現が怪しくなっている。4月に日銀は当初掲げていた「15年度を中心とする期間」から達成時期の目標を後ずれさせながらも、黒田東彦総裁は追加の金融緩和には慎重な姿勢を崩していない。ただ、想定外の原油安や消費低迷が続けばデフレ脱却が遠のき、物価上昇シナリオの修正や追加金融緩和を迫られる可能性が高まりそうだ。
国内の物価上昇を阻んでいる要因の一つが、原油価格の下落だ。ニューヨーク原油先物相場で指標となる米国産標準油種(WTI)は6月以降、3割近くも下落。また、原油や金などの国際商品価格指数は12年ぶりの低水準に落ち込んでいる。
物価の先行きについて、黒田総裁は記者会見で「マイナスもあるかもしれない」と発言し、原油価格の下落による下押し圧力の強まりを警戒する。
原油価格の下落を受け、日銀は7月の金融経済月報から、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数を公表するようになった。変動の大きい項目を取り除いた指数を基にすれば、物価の基調が一定方向に維持されていると判断されやすくなる。市場関係者からは「日銀は物価目標のあいまい化に成功した」との指摘もある。