金融政策決定会合後に記者会見する日本銀行の黒田東彦総裁=7日午後、東京都中央区の日本銀行本店【拡大】
日銀は今回の会合で、鉱工業生産と輸出、消費の判断を据え置き、住宅投資は着工件数の増加を踏まえ「持ち直している」に引き上げた。ただ、雇用・所得環境が改善しているにもかかわらず、個人消費の回復ペースは鈍い。個人消費は4~6月にマイナスに陥ったのではないかとの見方もある。
7月中旬以降は猛暑でエアコンなどの販売が活気づいている。黒田総裁は「7月のいくつかの指標は消費の回復を示すのではないか」と期待を込めた。
中国経済の減速について、黒田総裁は「地方の不況の長期化や最近の株価下落の影響など、いくつかのリスク要因はあるが、中国政府が景気刺激策を打つ余地はある」として、16年までは7%程度の経済成長が見込めるとの見解を示した。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「金利の安定を考えると、追加緩和はしにくい状態だ。物価目標のあいまい化によって、追加緩和を催促する雑音をシャットアウトできる。日銀は現実路線を取った」と指摘する。一方で「企業は人手不足でも人件費を増やそうとはしていない」として、2%の物価上昇を16年度度前半ごろに達成するという日銀の目標の実現には懐疑的だ。
追加の金融緩和論がくすぶる中で、エコノミストの間では消費などの先行きに慎重な見方が広がるとともに、日銀が物価目標の達成時期をさらに後ずれさせるとの観測も強まっている。