【論風】経済統合控えるASEAN市場 進出に知財部門関与が必要 (2/3ページ)

2015.8.20 05:00

 最近では製造拠点としてだけでなく技術開発拠点を現地に設置する企業も増えている中で、特許がなかなか認められない、審査に時間がかかるなどの問題点も指摘されている。さらに最近では、現地での技術ノウハウなどの営業秘密の侵害への懸念が、日本企業だけでなく韓国や中国企業にとっても重要課題としてあがってくる。現地進出後にこれらの問題が深刻化することで撤退の検討を余儀なくされているケースもあるという分析もある。

 ところが、よく調査してみると、日本企業と欧米企業で、ASEANにおける知財問題への取り組み姿勢がやや異なっていることが分かってきた。進出前に懸念点として挙げられている項目は欧米企業も日本企業も変わらないのだが、進出後に関しては欧米企業の課題は少数の問題に絞り込まれているのに対し、日本企業においては依然として多くの課題が山積しており、進出前と進出後で大きな差異がない。これは欧米企業が現地進出に当たって何らか対策を行っているのに対して、日本企業ではそのような解決策が進出前に講じられていないことを示している。

 ◆意思決定に弱い日本企業

 これに関連して現地進出の際の意思決定に知的財産部門が関与しているかどうかについては欧米企業では多くの企業が関与しているとしているのに対し、日本企業では現地進出の意思決定にほとんど関与できていないことも分かっている。意思決定に関与すれば予想される知財問題に対処する方策が検討され、回避できない問題があれば進出を見送ることもありえる。欧米企業ではこのようなプロセスを経た結果、進出後の課題は軽減され、絞り込まれているのではないかと思われる。知的財産基本法の制定で企業の知的財産戦略と経営戦略の一体推進がうたわれてから10年以上経過した。にもかかわらず知的財産部門が経営戦略上極めて重要な海外進出に際し意思決定にも参加できていない現状は大変心許ない。

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。