日本の貿易収支は現在赤字基調となっているが、14年度の経常収支は7兆8100億円の黒字となっている。なかでも知的財産権等使用料の収支は近年増加が続いており2兆円に迫る黒字となっている。これらの黒字の多くは現地に進出した関連会社からの特許やノウハウなどをベースとした収入であり、製造業に強い日本の技術貿易の特徴であるといえる。日本の産業構造が大きく変わる中で、ASEANなどの新興国においても知的財産をベースとした収入をあげていくためにも、企業の知的財産部門が現地進出の意思決定に確実に関与していくことは重要であろう。
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【プロフィル】渡部俊也
わたなべ・としや 1992年東工大博士課程修了(工学博士)。民間企業を経て、96年東京大学先端科学技術研究センター客員教授、99年同教授、2012年12月から現職。工学系研究科技術経営戦略学専攻教授兼担。55歳。東京都出身。