中国経済はどうにもならないほどの閉塞(へいそく)状況にある。「チャイナリスクで世界同時株安だ」と騒ぐだけでは非生産的である。鉄鋼の余剰生産能力が日本の生産規模の4倍もあり、自動車生産能力は実需の2倍になる。天津の巨大爆発事件の遠因は汚職党幹部によるずさんな経済開発区管理によるとされる。元を少しだけ市場実勢に近づけて切り下げた途端、元売りが殺到、つまり資本逃避ラッシュが起きた。株価暴落は当然の帰結であり、世界の株価の足かせになる状況は今後も頻発するだろう。
要は、株価頼みの景気からどう脱するかだ。
幸い、世界的にデフレ圧力が高まることはあっても、インフレ懸念が高まる情勢にはない。それもチャイナリスクのおかげである。中国需要の不振に伴って、原油、鉄鉱石、天然ゴム、金属などは下がり続けている。国際商品市況の低迷は世界景気不安につながるとの見方がメディアでよく報じられるが、変な話である。確かにロシア、中東など資源輸出国にとってみればマイナスだろうが、世界景気を引っ張るのは日米欧など消費国である。
米国の場合、FRBが利上げを急がないのは当然だ。そのメッセージを早く市場に出すべきだ。日本は消費税増税の後遺症がかなり重いことは歴然としているのだから、異次元緩和の追加策に加えて、消費税収の現役世代への還付など大胆な財政政策も必要だ。
17年4月からの消費税再増税どころではない。安倍晋三首相による、ピンチをチャンスに変える決断が待たれる。(産経新聞特別記者 田村秀男)