◆施設の奪い合い現実に
しかし、首都圏の介護は、現状でも深刻だ。特別養護老人ホームの申し込みをすれば、余命のある間に入居できるかどうか分からないほどの順番待ちでがくぜんとする。民間有料老人ホームで施設、サービスの充実したものに入居すれば、数百万、数千万円もの預託金が必要となる。サービス付き高齢者住宅など民間活力を活用した新制度もスタートしているが、首都圏では土地、施設建設費、人件費が高く、民間の参入に多くの期待はできない。創成会議が指摘する介護施設の奪い合いは、将来確実に現実化する。
首都圏に住む高齢者の多くは、高度成長期に地方の学校を卒業して東京に出、一生懸命働いて首都圏に住宅を建て、多額の住民税、固定資産税を納めてきた人々である。「年金生活者になったら地方に行けとは、あんまりではないか」と怒りたいのはこの人たちであって、整備を怠ってきた首長ではない。「多額の住民税などを納めてきた自分たちには、地元自治体で介護を受ける権利がある」との主張を受け入れれば、余裕がある首都圏の自治体でも財政が傾く。コスト高の首都圏で施設建設と維持費を介護保険で賄えば保険料の引き上げに拍車がかかる。
自治体の財政に占める教育、医療、清掃などの経費の割合は大きい。税金を納めない子供の時代のこれら経費を負担し、働く世代になれば首都圏に移って税金を納め、税金を納めない年齢になれば地方に戻って介護の経費を負担しろというのは不公平と批判したいのは、受け入れ先とされた自治体の方ではないか。