◆ニュービジネスも
故郷や赴任経験地、温泉や観光地で余裕のある老後生活を過ごしたいという需要はある。介護の受け皿も整備されるなら確実に顕在化するだろう。地方の主力産業は、商業、サービス業であるが、人口集積がなければ発展しない。住人が増えれば、タクシー、飲食、商業など多くの産業にプラスとなり、ニュービジネスも生まれる。これらを地域活性化の活路と考える候補地の市町村が首都圏の市町村と姉妹提携都市関係などを利用してまず成功例を作るのが早道かもしれない。自治体間の不公平を是正する地方交付税措置も必要だ。
介護の課題は、日本全体マクロな観点からみて制度が持続可能なものとして存続できるのかということだ。介護保険料の引き上げと介護水準の引き下げでつじつまを合わせる努力も大切だが、夢がない。介護移住のようにパラダイム転換につながる発想が大切だ。国や首都圏の自治体の責任者には、団塊世代が明るい老後に希望を持てる大きな構想、代案を打ち出してもらいたい。
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【プロフィル】北畑隆生
きたばた・たかお 東大法卒。1972年通商産業省(現経済産業省)入省。官房長、経済産業政策局長を経て2006年事務次官。08年退官。日本ニュービジネス協議会連合会特別顧問、三田学園理事長。65歳。兵庫県出身。