一方で、日銀は追加緩和をしたくてもできない実情もある。「海外経済の減速を金融政策で補うのは難しい。効果は限定的」(日銀幹部)との認識があるためだ。
また、政府との物価上昇率目標に対する乖離(かいり)も大きいためとの指摘もある。「物価目標2%の安定実現に向けては道半ば」(黒田総裁)と現状認識する一方で、政府は成長戦略として、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障を「新三本の矢」として新たに位置づけ、従来の柱の一つだった金融政策を外した。
「消費の活性化や低所得者対策の進展に向け、日銀が掲げる物価2%実現を急ぐべきではないとの判断に傾いたため」(証券アナリスト)ともいわれるからだ。このままでは、「旧第1の矢」の金融政策がかすみかねない。日銀は、物価目標の達成の道筋に向けた丁寧な説明を求められる。